アルミ表面処理・めっき技術情報
2024.06.19

硬質クロム・梨地硬質クロム処理とは?

硬質クロムめっき処理とは、電気めっきの中では、最も硬い皮膜をつける事が出来る処理です。硬度に関する具体的な数値をご紹介すると、「膜厚が25μm以上」で「HV800〜1000」、JIS(H8615)でいうと「膜厚が20μm程度」で「ビッカース硬度がHv750以上」とされています。本めっき処理は通常、基材としては鉄材が多く、当社ではアルミ材(アルミニウム)への硬質クロムめっき処理も行うことが可能です。

硬質クロム・梨地硬質クロム処理の基本

アルミ材への硬質クロム処理は、一般的に亜鉛置換・ニッケルめっき処理を行い、その上に硬質クロムめっき皮膜を生成します。一方当社では、アルミ材へのダイレクトでのめっき処理が可能であり、この点はサービスページにて詳細をお伝えしています。
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また、梨地硬質クロム処理の機械特性として高硬度、潤滑性、肉盛性、耐摩耗性、耐熱性があるめっき処理と言われており、梨地処理後にクロムめっき、硬質クロムめっきをするめっき処理で、装飾性、滑り性を向上させる処理です。梨地処理とは、金属表面などの素材に鉄・砂・ガラスなどの粒子を吹き付けて、表面を粗す方法です。

硬質クロムと、梨地硬質クロム処理の違い

繊維機械部品への硬質クロムめっき|アルミ表面処理・めっき.com

硬質クロム処理と梨地硬質クロム処理の主な違いは、表面仕上げの特性にあります。硬質クロム処理は、部品の表面に硬いクロムの薄膜を形成し、高い耐摩耗性や耐腐食性を提供します。この処理は滑らかで光沢のある表面が得られます。

一方、梨地硬質クロム処理は、表面に細かい凹凸を持たせることで、光沢を抑えたマットな仕上がりを実現します。この細かな凹凸はグリップ性能が向上し、特定の用途で滑りにくさを求められる部品に適しています。例えば、機械の摺動部品や滑りを防ぎたい機能部品に利用されます。

注記:仕上研磨工程を加えると、更に特性が増加します。

硬質クロムのメリット・デメリット

硬質クロム処理は、多くの工業製品において利用される表面処理技術で、主なメリットとデメリットは以下の通りです。

硬質クロム・梨地硬質クロム処理のメリット

  • 耐摩耗性:高硬度で優れた摩擦係数を持つため、耐摩耗性が大幅に向上します
  • 耐腐食性:腐食環境に強く、長寿命化に寄与します
  • 低摩擦特性:摩擦係数が低いため、機械部品の動作がスムーズになります
  • 高温耐性:高温下でも性能が維持されるため、過酷な環境下で使用可能です

硬質クロム・梨地硬質クロム処理のデメリット

  • コスト:一般的なめっきである亜鉛めっきやニッケルメッキと比較して、処理コストが多少高い
  • 脆性:皮膜が厚くなると脆くなり、衝撃に弱くなる可能性があります
  • 初期表面仕上げ必要:ベース素材の初期仕上がりが影響するため、加工精度が求められます
  • 環境影響:クロムは有害なため、処理工程において環境負荷が懸念されることがあります

硬質クロムに適した素材

硬質クロム処理に適した素材は、主に以下のような金属材料です。

  • 炭素鋼と合金鋼:これらは硬質クロム処理によって耐摩耗性と耐食性が大幅に向上します。特に機械部品や工具で多用されます。
  • 鋳鉄:構造物や産業機械の部品としてよく使用される鋳鉄も硬質クロム処理に適しています。これにより、耐食性が向上し、使用寿命が延びます。
  • ステンレス鋼:もともとの耐食性をさらに強化するために使用されます。食品加工機械や医療機器などで利用されています。
  • 銅や銅合金:電気的特性を損なわずに耐摩耗性を向上させるために、電気部品やモールド部品に使用されます。
  • アルミニウム合金:軽量化と耐摩耗性を兼ね備えた部品に適用されます。航空機部品などで利用されます。

めっき処理事例のご紹介

中空シャフトへの硬質クロムめっき処理

本表面処理・めっき処理事例は、アルミ表面処理・めっき.COMが手掛けた自動車バッテリーメーカ向けの製品で、硬質クロムや梨地硬質クロムを施しています。

アルミを基材としており、極めて厳しい規格要件で高硬度、膜厚の均一性、耐摩耗性、耐熱性が指定許容数値で求められています。お客様から提示されるスペックとそれらを遵守すべく規格に対し、正確に沿った作業手順書、プロセスシート、設備機器(設備能力及び校正内容を含む)、作業条件などを確実に維持する作業工程管理のもとで実施しております。

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食品機械部品への硬質クロムめっき

本表面処理・めっき処理事例は、アルミ表面処理・めっき. COMが手掛けた食品機械のパーツとなる製品で、当社が得意とする硬質クロムめっきを施しています。

ロットは10個と、比較的少ない製品です。特徴としては、図面上にめっき処理後に膜厚の均一性(膜厚30ミクロン、寸法精度0,02ミリ)に関する精度要求があった点が挙げられます。要求精度は、めっき処理だけでは管理できる精度ではないため、円筒研磨により軸に対する振れ精度を管理するとともに、更に光沢度を満たすためにバフ研磨仕上げ加工を行っています。

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繊維機械部品への硬質クロムめっき

繊維機械部品への硬質クロムめっき|アルミ表面処理・めっき.com

本表面処理・めっき処理事例は、アルミ表面処理・めっき. COMが手掛けた繊維機械のパーツとなる製品で、硬質クロムめっきを施しています。

鉄を基材としており、繊維機械の構成部品でなかでも糸道に使用される部品のため、製品に傷を与えないよう軸部への傷なしとの指定がありました。また、めっき面に対する面粗度要求が細かく、図面上にはバフ研磨の要求があり、面粗度Ra0.8の要求がありました。本製品はロット20個と当社が手掛ける製品の中では比較的数が少ない製品と言えます。

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